「男が美容にお金をかけるなんて」そんな空気が漂っていたのは、もう昔の話かもしれません。ドラッグストアの棚にはメンズ専用のスキンケアコーナーが並び、美容クリニックの広告でも男性向けメニューを見かける機会が増えました。
とはいえ、実際に40代男性がどれくらい美容にお金と時間をかけているのか、周囲からどう見られているのかは、なかなかイメージがつかみにくいテーマです。この記事では、各種の意識調査データをもとに、40代男性の美容事情のリアルと、その変化の背景を整理していきます。
男性の美容市場が広がっている背景

ここ数年、男性向け美容市場が拡大している理由としてよく挙げられるのが「清潔感」というキーワードです。就職活動やビジネスの場面で「清潔感のある身だしなみ」が評価される風潮が強まり、スキンケアや髭剃り、ヘアケアといった基礎的な身だしなみのケアが、女性だけでなく男性にとっても「当たり前の自己管理」として受け止められるようになってきました。
くふう総研が家計簿アプリ「Zaim」の男性ユーザーを対象に行った調査では、現在美容に関する悩みを抱えている男性は6割を超え、スキンケアの実施率も約6割に達していることが報告されています。これは、美容への関心がもはや一部の意識の高い層だけのものではなく、幅広い年代に広がっていることを示すデータといえるでしょう。
こうした流れの中で、40代男性の美容意識はどのように位置づけられるのでしょうか。次の章から具体的に見ていきます。
40代男性のスキンケア実施率、実は「意外と高い」

「美容に熱心なのは若い世代だけ」というイメージを持たれがちですが、データを見るとやや印象が異なります。
株式会社デルタマーケティングが40〜69歳の男性を対象に行った調査では、自分の外見を整えること(スキンケア、ヘアケア、おしゃれ、身だしなみなど)に関心があると答えた人が53.7%にのぼり、40〜60代男性の5割強が美容に関心を持っているという結果が出ています。
一方で、株式会社クロス・マーケティングの調査では、スキンケアの実施率そのものは25〜29歳が最も高く、45〜49歳のみ4割に届かないという結果も出ており、「関心はあるが、実施率としては20代ほどではない」というのが40代の実態に近いようです。つまり40代は、興味・関心のレベルでは高い水準にありながら、実際の行動(習慣化)という点ではまだ若年層に一歩譲る、という位置づけにあると考えられます。
お金の使い方に見える40代らしさ

金額面で見ると、40代男性の傾向にはいくつかの特徴があります。
株式会社ネオマーケティングの調査によれば、スキンケアに月5,000円以上をかける「高投資層」の割合は、10〜20代で20.0%と最も高く、30代16.0%、40代14.0%、50代6.0%と、年代が上がるにつれて緩やかに減少していく傾向が見られました。つまり40代は、10〜20代ほど積極的に高額を投じる層ではないものの、50代と比べれば一定の投資意欲を保っている「中間層」に位置しています。
また、株式会社アスマークの調査では、スキンケア商品を購入する際に「製品のパッケージ」を参考にする人が40代で6割に達しており、口コミサイトを重視する若年層とは異なる、実用重視・失敗を避けたい堅実な購買行動がうかがえます。派手さよりも「間違いのないものを選ぶ」という姿勢は、いかにも40代らしい消費行動といえるかもしれません。
なぜ40代でお金をかけるのか?そのきっかけ

クロス・マーケティングの調査では、スキンケアを始めたきっかけについて興味深い世代差が示されています。20代では「他人がきれいな肌を保っているのを見て興味を持った」という周囲からの刺激がきっかけになりやすいのに対し、30代・40代では「年齢を重ねる中で、外見のケアが重要だと感じた」という回答が最も多くなっています。
これは、20代が「憧れ」からスキンケアに入るのに対し、40代は「加齢による変化への実感」から美容に向き合い始めるという、動機の違いを示しています。シミ・くすみ・たるみといった変化を鏡の中に見つけたとき、初めて本気でケアを考え始める。そんな40代男性の姿が浮かび上がってきます。
実際、くふう総研の調査でも、美容の悩みとして最も多く挙げられたのは「シミ・くすみ」で、加齢に伴う肌悩みがトップに立っています。これは40代以上の男性に特に刺さりやすい悩みだといえるでしょう。
何にお金をかけている?人気のアイテムとサービス

40代男性がお金をかけている美容アイテムには、いくつかの傾向があります。
まず基本となるのは洗顔料や化粧水といった基礎スキンケアアイテムです。デルタマーケティングの調査では、年間購入金額が2,000円未満〜5,000円未満の層で最もよく購入されているのは洗顔料で、5,000円以上を投じる層になると、化粧水・美容液・栄養クリーム・乳液まで幅広くそろえる人が増えることが分かっています。
また、株式会社クロス・マーケティングが実施した調査では、40代男性は「眉毛を整える」ケアの実施率が全年代の中でも高いという結果が出ています。派手な変化ではなく、身だしなみとして違和感のない範囲で整える、という40代らしい美容の楽しみ方がうかがえます。
さらに、脱毛や美容医療への関心も一定数存在します。くふう総研の調査では、ムダ毛処理への関心を持つ40代の声として「スネ毛のない大人が増えている気がするので、時流に乗りたい」といったコメントも紹介されており、若年層だけのものと思われがちだった脱毛への関心が、40代にも広がりつつあることがわかります。
周囲からの目線はどう変化しているか

美容ケアに励む男性に対する周囲の反応も、以前とは変わってきています。
株式会社リクルートが行った調査では、女性が「男性がやっていたら印象が良くなる美容ケア」として最も多く挙げたのは「眉毛を整える」で、僅差で「スキンケア」が続きました。派手な変化を求めているわけではなく、清潔感や身だしなみの延長として、さりげないケアが好意的に受け止められている様子がうかがえます。
一方で、株式会社mitorizの調査に寄せられた自由回答には、「男性がメイクをしたりスキンケアをすることに抵抗はなく、清潔感と若さや肌の状態を保つためにケアすることは当たり前の時代になった」という30代男性の声や、「男性もスキンケアやメイクをするのが当たり前の時代なので派手でなければ抵抗はない」という50代男性の声が紹介されています。世代を問わず、「過度でなければ、男性の美容ケアは肯定的に受け止められる」という空気が広がりつつあるといえそうです。
40代男性の美容意識、今後はどうなる?

これまで見てきたデータを総合すると、40代男性の美容意識には次のような特徴が見えてきます。
まず、関心そのものは半数以上が持っており、決して少数派ではないということ。次に、実際の行動としては20代ほど積極的ではないものの、加齢による肌悩みの自覚をきっかけに、堅実にケアを始める人が一定数いるということ。そして、金額面では「高額投資層」の割合こそ若年層に及ばないものの、パッケージの信頼性や実用性を重視した、無理のない範囲での投資を続けているということです。
今後、清潔感やセルフケアへの社会的な評価がさらに高まるにつれて、40代男性が美容にお金をかけることは、特別なことではなく「大人の身だしなみの一部」として、ますます自然な選択肢になっていくと考えられます。
まとめ

40代男性が美容にお金をかけることは、もはや珍しいことではなく、多くの調査データが示すとおり、半数以上がすでに何らかの関心や行動を示している状況です。20代のような憧れ主導のケアとは異なり、40代は「加齢による変化への気づき」を出発点に、洗顔料やスキンケアの基礎アイテムから、眉毛のお手入れ、脱毛や美容医療まで、無理のない範囲でケアの幅を広げつつあります。周囲の受け止め方も好意的なものが多く、「美容にお金をかける男性」は、今どきごく自然な選択のひとつになりつつあるといえるでしょう。
